情報の確認
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法人口座の申込で用意するものは、登記事項証明書と代表者の身分証だけではありません。実際には「法人そのもの」「代表者・取引担当者」「実質的支配者」「事業の実態」の4つを説明する資料が求められます。
このうち前の3つは法令で確認方法が定められており、4つ目だけが金融機関ごとに異なります。ここを分けて理解しておくと、「なぜここまで出すのか」「なぜ銀行によって違うのか」の説明がつきます。
登記事項証明書(銀行では「履歴事項全部証明書」と案内されることが多い書類です)や定款といった法人の基本書類に加えて、事業の実態を確認するための資料を求められることがあります。
複数の金融機関が公式サイトで公表している必要書類を並べてみると、おおむね次の4つの区分に整理できます。名称や点数は各社で違いますが、「何を確かめようとしているか」の軸は共通しています。
| 確認される対象 | 求められることがある書類 | 注意点 |
|---|---|---|
| 法人そのもの | 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、定款、法人の印鑑証明書 | 登記事項証明書について発行から6か月以内を求める金融機関があります。原本指定の場合もあります |
| 代表者・取引担当者 | 運転免許証、マイナンバーカードなどの本人確認書類 | 代表者以外が手続きする場合、その方の本人確認書類も別途必要になります |
| 実質的支配者 | 株主名簿、法人税申告書別表二、実質的支配者リストの写しなど | 該当者の氏名・住所・生年月日を申告します。申込前に、自社の該当者を特定しておきます(判定は後述のFAQを参照) |
| 事業の実態 | 許認可証、契約書、請求書、ウェブサイト、会社案内、口座明細など | ここが最も差が出る部分です。次の項で詳しく書きます |
この4区分は思いつきではありません。犯罪収益移転防止法にもとづく「取引時確認」で、金融機関が確認することとされている項目に対応しています。同法では、法人のお客さまについて、名称と本店(または主たる事務所)の所在地、取引を行う目的、事業の内容、実質的支配者、そして手続きに当たる担当者の本人特定事項を確認することとされています(警察庁「犯罪収益移転防止法の概要」)。
ここでひとつ区別しておきたい点があります。法令上、法人の「事業の内容」は定款や登記事項証明書などで確認することとされています。契約書、請求書、ウェブサイトといった資料は、法令が定める確認方法そのものではなく、各金融機関が実態を確かめるために追加で求めているものです。
つまり登記書類や本人確認書類は法令上の確認に必要なもの、事業の実態資料は各金融機関の判断で求められるものという整理になります。この違いが分かると、「なぜここまで出すのか」「なぜ金融機関ごとに違うのか」の説明がつきます。私はこれを後から知りました。先に知っていれば、揃える順番で迷わずに済んだはずです。
実店舗をお持ちの方は、店舗の契約書も念のため用意しておくことをおすすめします。本店所在地とは別に店舗を構えている場合、そちらの実態も説明できたほうが話が早く進みます。求められてから探すより、はじめから手元に置いておくほうが確実です。
ここが今回いちばん共有したい点です。GMOあおぞらネット銀行は、事業内容の確認資料について「優先順位」と「受け付けられない書類」を公式サイトで明示しています。他の金融機関ではあまり見かけない情報で、これは非常に参考になりました。
同行の「事業内容確認書類について」(2026年9月4日参照)によれば、資料には次の3点が読み取れることが求められるとされています。
そのうえで、提出資料の優先順位が公表されています。上にあるものほど、実態を示す力が強いという整理です。以下は、同ページに示された順位のうち創業期に関係の深い箇所を抜き出し、筆者が「用意しやすさ」の観点を加えたものです。
| 優先 | 資料(同行の表記による) | 用意しやすさ(筆者の感覚) |
|---|---|---|
| 1 | 各行政機関発行の許認可証 | 該当事業のみ。あるなら最優先で出す |
| 3 | ホームページなど | 設立直後でも自分で用意できる |
| 5 | 自社発行の請求書等+入出金が分かる口座明細 | 入金の記録とセットで出す |
| 6 | 会社案内、パンフレット、チラシ | 自分で作れる |
| 9 | 事業計画書 | これだけだと弱い、という順位づけ |
私がこの一覧を見て「なるほど」と思ったのは、事業計画書が最後だという点です。設立直後は計画書しか出せるものがない、と考えがちです。しかし優先順位で言えば、計画書は「これから」の資料であって、「今、動いている」ことの資料ではありません。
そして3番目にホームページが来ています。設立直後でも自力で用意できるもののなかでは、これがいちばん上位にあります。柱の記事でもウェブサイトについて触れましたが、この順位づけを見ると、あったことに越したことはない、という私の実感とも重なります。
あわせて、受け付けられない書類の条件も同ページに示されています。ここは見落としやすいところです。
古い契約書を「実績があります」と出しても、直近の活動を示す資料としては扱われないということです。直近のものを揃える、という視点を持っておくと無駄がありません。
なお、これはあくまでこの1社が公表している基準です。他の金融機関が同じ順位で見ているという意味ではありませんし、この順番どおりに出せば結果が変わるという話でもありません。ただ、「実態を示す資料とは何か」を考えるうえでの物差しにはなります。
ここで一番お伝えしたいのは、必要書類は金融機関によって違うということです。ある銀行で求められなかった書類が、別の銀行では必要になります。「法人口座 必要書類」で調べて出てきた一覧が、そのまま申込先に当てはまるとは限りません。
申込先の公式サイトで、必要書類のページを必ず確認してください。そのうえで揃えてから進めると、やり取りの往復を減らせます。不明な点があれば、窓口や専用ダイヤルに問い合わせるのが確実です。
申込の途中で手が止まりやすいのがここです。「実質的支配者」は聞き慣れない言葉ですが、要するに「この会社を実際に支配している個人は誰か」ということで、犯罪収益移転防止法にもとづいて確認されます。
ひとり会社であれば代表者本人になることがほとんどですが、共同で設立した場合は判定が必要です。目安は次のとおりです。
| 会社の形態 | 該当する個人の目安 |
|---|---|
| 株式会社など | 議決権の25%超を直接または間接に保有する個人 |
| 合同会社など | 事業の収益または財産の25%超の配当・分配を受ける権利を持つ個人 |
| 該当者がいない場合 | 事業活動に支配的な影響力を持つ個人 |
| それもいない場合 | 代表者 |
見落としやすいのが除外規定です。ほかに50%超を有する個人がいる場合、25%超の方は実質的支配者に該当しません。たとえば60%と30%の2人がいる会社では、30%の方は該当しないという整理になります。
証明に使われるのは、株主名簿、法人税申告書別表二、実質的支配者リストの写しなどです。実質的支配者リスト制度は株式会社(特例有限会社を含む)が対象で、合同会社は対象外です。合同会社の場合は、定款や社員の出資状況が分かる書類で説明することになります。
判定に迷う場合は、申込先の金融機関が案内を出していることが多いので、そちらをご確認ください。設立を依頼した司法書士に聞くのも確実です。
これは設立手続きの話ですが、口座で最初につまずくポイントなので触れておきます。
資本金は、株式会社では発起人または設立時取締役、合同会社では社員になろうとする者(多くは代表社員本人)の個人名義の口座に払い込みます。法人名義の口座ではありません。理由は単純で、登記が完了するまで法人口座は作れないからです。
「法人口座を作ってから資本金を入れる」と考えていると、順序が逆になって手が止まります。実際の流れはこうです。
払込のタイミングには決まりがあります。合同会社は定款の作成後、設立登記の時までに払い込む必要があります。株式会社(発起設立)は令和4年の運用変更により、その設立のために出資されたと認められる場合には、定款作成日より前の払込も認められるようになりました。通帳の写しは、表紙・個人情報欄・記帳欄の3か所が必要になるのが一般的です。手続きの詳細と最新の取り扱いは、法務局または司法書士等の専門家にご確認ください。
ここも見落としやすい点です。資本金は発起人の個人口座に入ったままではありません。法人口座が開設できたら、そこへ移す必要があります。
会社のお金と個人のお金が混ざったままだと、会計上も税務上も整理がつきません。法人口座が使えるようになったら、早めに移しておくことをおすすめします。
移動の記録は帳簿に残ります。いつ、いくらを、どこからどこへ移したかが分かるようにしておいてください。一般には、この移動は新たな出資や役員からの借入とは別のもの(すでに会社に帰属している資金の移動)として整理されますが、具体的な処理は個別の事情によります。必ず顧問税理士にご確認ください。
なお、法人口座の開設に時間がかかると、その間の入出金を個人口座で立て替えることになります。件数が増えるほど、あとで整理する手間も増えます。早く動いたほうがよい理由は、ここにもあります。
「何が必要か」は調べれば出てきますが、「それをどこで、いくらで、何日で取れるのか」まで書いてある記事は多くありません。私はここで日数を読み違えました。
法務局の窓口、郵送、オンラインのいずれでも請求できます。オンライン請求のほうが手数料は安く設定されています。
| 請求方法 | 登記事項証明書 | 印鑑証明書 |
|---|---|---|
| 書面請求(窓口・郵送) | 600円/通 | 500円/件 |
| オンライン請求・郵送で受取 | 520円/通 | 450円/件 |
| オンライン請求・窓口で受取 | 490円/通 | 420円/件 |
注意したいのは受け取りまでの日数です。郵送で受け取る場合、請求から手元に届くまで日数がかかります(私の場合は数日でした)。「発行から6か月以内」を求める金融機関がある一方で、取得が早すぎても意味がありません。申込の日程を決めてから逆算して取るのが無駄がありません。
印鑑証明書は、法人の印鑑を法務局に提出していることが前提です。書面で設立登記を申請した場合は従来どおり印鑑の提出が必要ですが、オンラインで申請した場合は印鑑の提出が任意とされています。
つまりオンライン申請で印鑑を提出していないと、印鑑証明書は取得できません。金融機関から求められる可能性がある以上、設立の段階で提出しておくほうが後が楽です。私は設立を依頼した司法書士に確認しました。
運転免許証やマイナンバーカードが使われます。マイナンバーカードを持っていない場合、申請からカードが発行され市区町村に届くまでおおむね1か月、その後さらに交付通知書が届くまで数週間かかると案内されています。受け取りには市区町村の窓口での手続きが必要です。設立と並行して、早めに申請しておくことをおすすめします。
やり取りの往復が増える原因は、たいてい書類そのものではなく書き方や状態でした。提出前にここだけ見てください。
そして、必要書類は金融機関によって違います。このチェックリストは共通して効く部分だけをまとめたものです。申込先の公式サイトにある必要書類のページを、必ずご確認ください。
株式会社では発起人または設立時取締役、合同会社では社員になろうとする者(多くは代表社員本人)の個人名義の口座に払い込みます。登記が完了するまで法人口座は作れないためです。詳しくは本文の第4章をご覧ください。
実質的支配者は、株式会社などでは議決権の25%超を直接または間接に保有する個人、合同会社などでは事業の収益または財産の25%超の配当・分配を受ける権利を持つ個人が目安とされます。ただし、ほかに50%超を有する個人がいる場合、25%超の方は該当しません。該当者がいない場合は、支配的な影響力を持つ個人、それもいない場合は代表者となります。判定に迷う場合は、申込先の金融機関の案内をご確認ください。
株式会社(特例有限会社を含む)の場合、株主名簿のほか、商業登記所が交付する実質的支配者リストの写しを求められる場合があります。この制度は令和4年1月31日から運用されています。ただし、会社が登記所へ申し出て初めて作成・保管される任意の制度のため、申出をしていない場合は交付を受けられません。
ただし合同会社などの持分会社は、この制度の対象外です。定款や社員の状況が分かる資料など、別の書類で確認されるのが一般的です。求められる書類は金融機関によって異なりますので、必要書類の一覧をご確認ください。
銀行に届け出る印鑑(銀行届出印)と登記所が発行する法人の印鑑証明書の提出を求める金融機関があります。一方で、届出印の登録を不要とし、印鑑証明書も原則として求めないネット銀行もあります(代表者と取引責任者が異なる場合のみ求める、といった扱いです)。求められるかどうかは金融機関によって異なりますので、申込先の必要書類のページをご確認ください。なお、オンラインで設立登記を申請する場合、登記所への印鑑の提出は任意とされていますが、提出していないと法人の印鑑証明書は取得できません。口座開設で求められることが多いため、印鑑の届出をしておくのが実務的です。登記所に届け出た印鑑(法人実印)と銀行届出印を同じにするか分けるかは、社内の運用に合わせてご判断ください。
建設業や飲食業など許認可を要する事業では、その証明書の提出を求められる場合があります。取得済みであることを示せるよう準備しておくと、やり取りが減ります。
審査基準は公表されていないため、影響の有無をお答えすることはできません。会社法上、資本金の額に下限はありません。金額そのものより、事業の内容と資金の流れを説明できるかどうかを整えるほうが、準備としては確実だと考えています。
金融機関ごとの維持費・振込手数料・開設期間は、法人口座比較ガイドに8行分の公表値をまとめています。
バーチャルオフィスを利用している場合に法令が何を求めているかは、バーチャルオフィスで法人口座は開設できる?で条文にあたって整理しています。
本記事は上記の公表資料を参照して作成しています。特定の金融機関を推奨するものではありません。必要書類・手数料・条件は変更される場合がありますので、最新の内容は各社および法務局の公式情報でご確認ください。
本記事は、合同会社NEXBIZ代表・椎木辰徳が自社の法人設立時の経験にもとづいて執筆したものです。当社は金融機関ではなく、本記事に関して特定の金融機関から対価を受け取っていません。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の成果を保証するものではありません。本記事に記載した経験および見解は筆者個人のものであり、金融機関が示す審査基準ではありません。記載内容は情報確認日時点の情報にもとづいています。手数料、必要書類、申込条件は変更される場合がありますので、最新の内容は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。申込み、契約、審査は閲覧者と各金融機関との間で直接行われ、当社は審査結果を保証するものではありません。当社は個別の申込みに関する代理または媒介を行うものではありません。個別の税務・法務・金融に関するご判断は、専門家または各公式窓口へご相談ください。当サイトの情報の利用に関する詳細は免責事項、記事の作成方針は編集方針、広告の取扱いは広告掲載ポリシーをご覧ください。
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