情報の確認
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法人口座を比べるとき、多くの人が見るのは「振込手数料が1回いくらか」です。私もそうでした。
ただ、実際に効いてくるのは1回あたりの金額 × 月間の件数です。維持費が無料でも件数が増えれば逆転しますし、逆に件数が少なければ維持費のある口座は損になります。自社が月に何件振り込むかを先に数えないと、比較の前提がそろいません。
そしてもう一つ、開設した直後は気にならないのに、決算期になって効いてくるのが会計ソフトとの連携です。こちらは費用ではなく、作業時間と保存義務の話になります。
金融機関によって名称は違いますが、かかる費用はおおむね次の4つに整理できます。申込前にこの4つで並べておくと、比較の抜けを減らせます。
| 費用の種類 | 発生の仕方 | 確認しておくこと |
|---|---|---|
| 口座維持費・利用料 | 毎月または毎年、定額でかかる | 無料の条件があるか(残高、取引実績など)。プラン制の場合は下位プランの制限 |
| 振込手数料 | 1件ごとにかかる | 同一金融機関宛と他行宛で金額が違います。金額帯(3万円未満/以上)で分かれる場合も |
| 入出金・ATM関連 | 利用のつど | 時間帯・曜日による差、提携ATMの範囲、両替や現金取扱の手数料 |
| 書面・証明書の発行 | 依頼のつど/年1回など | 紙の通帳の発行・繰越、残高証明書、取引明細の郵送 |
私が見落としていたのは4つ目です。決算のときに残高証明書が必要になり、その発行手数料が口座の数だけかかりました。口座を増やすと、この種の費用も口座数に比例します。
また、紙の通帳を発行しない代わりに手数料を無料または低額にしている扱いもあります。通帳が要るかどうかは、会計ソフトを使うなら実はほとんど関係ありません。ここは後述します。
振込手数料は1回あたりの金額で比較されがちですが、実際のコストは1回あたりの金額 × 月間の振込件数で決まります。
取引先が多い、外注が多い、報酬の支払いが多い。こうした事業では件数が積み上がるため、1回あたりのわずかな差が月単位・年単位で効いてきます。逆に振込がほとんど発生しない事業なら、優先度は下がります。
維持費と1件あたりの金額の組み合わせによって、どちらが安いかは件数で入れ替わります。
図5のように、維持費が無料でも件数が増えると逆転することがあります。自社が月に何件振り込むかを先に数えてから比較すると、判断の材料がそろいます。私は「1回あたりが安いほう」で選びかけて、後から件数を数えて考え直しました。
ここは知っておくと、比較の見方が変わります。他行宛の振込には、金融機関どうしの間で発生している費用があります。
他行宛に振り込むと、送る側の金融機関から受け取る側の金融機関へ費用が支払われます。かつてはこれが「銀行間手数料」と呼ばれ、個別の金融機関どうしの協議で定められていました。公正取引委員会の実態調査では、一般の振込で3万円未満117円、3万円以上162円(税抜)という水準が示されています。全金融機関が一律にこの額だったという意味ではありません。
これが2021年10月に見直され、「内国為替制度運営費」として一律62円になりました。さらに2026年10月からは61円に改定されることが公表されています。なお、この62円・61円について、公表資料に税抜・税込の明示はありません。
ここで大事なのは、これが利用者の払う振込手数料そのものではないという点です。金融機関はこの費用に加えて、自社のシステム運用費や人件費を含めて手数料を設定します。したがって、この費用が1円下がったからといって、利用者の振込手数料が1円下がるわけではありません。
この費用は金融機関のコスト要因の一つであって、利用者が払う振込手数料の下限を定めるものではありません。実際、他行宛の振込を一定回数まで無料としている金融機関もあります。ただ、こうした費用が他行宛にだけ発生することを知っておくと、「なぜ同行宛は安く、他行宛は高い傾向にあるのか」の見当がつきます。比較するときは、同行宛と他行宛を分けて見てください。
なお給与・賞与の振込は、この費用の設定対象外(銀行間では無料)とされています。これは全銀ネットが一律に定めているものです。ただし、利用者が金融機関に払う給与振込の手数料が無料になるという意味ではありません。総合振込や給与振込の利用者手数料は、各金融機関の料金表でご確認ください。
比較の前にやることは1つです。直近3か月の入出金を見て、次の項目を数えてください。見積もりではなく、実績で数えます。
この7つが分かれば、公式サイトの料金表を自社の数字に当てはめて、月額に換算できます。そこまでやってはじめて比較になります。
設立直後で実績がない場合は、「今後3か月で発生する予定」を書き出してください。取引先の数、外注の数、家賃や通信費の支払い先。それだけでも件数の桁は見えます。
開設した直後は、正直まったく気になりませんでした。効いてきたのは、取引が増えてからです。
会計ソフトと口座が連携できると、入出金の明細が自動で取り込まれます。連携できないと、明細をダウンロードして、形式を整えて、取り込むという作業が毎月発生します。件数が少ないうちは数分で終わりますが、増えるとそのまま時間になります。
| 確認する点 | なぜ効くか |
|---|---|
| 使う予定の会計ソフトに対応しているか | 対応金融機関は各ソフトが公開しています。口座を決める前に見るべきです |
| 連携の方式 | ネットバンキングのIDを預ける方式か、金融機関が用意した接続方式か。一般に後者のほうが安定するとされますが、実際の可否や安定性は各社の仕様によります |
| 取り込める期間 | 過去何か月分まで遡れるか。設立初期の分をあとから入れられるか |
| 明細の粒度 | 振込依頼人名がそのまま入るか。ここが荒いと、消込に手作業が残ります |
| 複数口座の扱い | 口座を分けている場合、同じソフトにまとめられるか |
| 権限の分け方 | 顧問税理士に見てもらう権限を、振込権限と分けられるか |
顧問税理士がいるなら、口座を決める前に相談してください。使う会計ソフトが決まっていれば、連携できる金融機関から逆算できます。後から乗り換える手間を減らせます。
会計ソフト自体の比較は法人向け会計ソフト比較にまとめています。
作業時間の話だけではありません。令和6年1月から、電子取引でやりとりしたデータは、データのまま保存することが必要になりました。
対象になるのは、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データです。メールで受け取ったPDFの請求書、取引先のサイトからダウンロードした領収書などが該当します。紙でやりとりしたものをデータ化する必要はありません。データで受け取ったものを、紙に印刷して保存するだけでは足りない、という改正です。
保存には「真実性の確保」と「可視性の確保」の両方が必要です。
検索要件については、2課税年度前の売上高が5,000万円以下の場合、またはプリントアウトを日付・取引先ごとに整理された状態で提示・提出できるようにしている場合で、かつ税務調査等の際にデータのダウンロードの求めに応じられるようにしているときは不要とされています。「売上が小さければ何もしなくてよい」という意味ではありません。該当するかどうかの判断と、ダウンロードの求めへの対応体制については、顧問税理士にご確認ください。
また、システムの整備が間に合わないなど相当の理由があると所轄税務署長が認める場合の猶予措置もあります。ただしこれは、相当の理由があることに加えて、税務調査等の際にデータのダウンロードの求めと出力書面の提示・提出の求めの双方に応じられるようにしていることが必要とされています。資金繰りや人手不足といった事情がなく、整備が整っているにもかかわらず保存していない場合は、相当の理由があるとは認められないとされています。なお、以前の宥恕措置は令和5年12月31日で終了しています。
ここで誤解しないでいただきたい点があります。銀行口座の入出金明細そのものが、この保存義務の対象書類に当たるかどうかは、内容によります。上に挙げた請求書や領収書に相当するものが対象です。なお、インターネットバンキングを利用した振込等も「電子取引」に該当するとされています。この場合、窓口で振込をしたときに受け取る書面に記載される事項(取引年月日・金額・振込先名など)が記載されたデータが保存の対象になります(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問10)。一方で、通帳代わりに参照する入出金明細のすべてが対象になるという意味ではありません。会計ソフト連携は、この保存義務を直接満たすための仕組みではありません。帳簿づけの手間を減らし、証憑の管理をまとめやすくする、という位置づけです。
そのうえで、多くの会計ソフトには証憑を保存する機能があり、上記の要件に対応した保存ができるものもあります。自社がどの要件を満たす必要があるか、どの方法で満たすかは、必ず顧問税理士にご確認ください。本記事は一般的な情報提供にとどまります。
私がやり直せるなら、この順番で進めます。
私は⑥から始めてしまい、①と②を後から知りました。順番が逆だと、開設できた後に「連携できない」と分かって、また探すことになります。
なお、特典やキャンペーンで選ぶこと自体は悪くないと思います。ただ適用条件と期間は必ず確認してください。特典の有無より、日々の使い勝手のほうが長く効いてきます。
金融機関によって異なります。また、同一金融機関宛か他行宛か、金額帯、申込方法(窓口・ネットバンキング)によっても変わります。比較する際は、自社の振込件数と他行宛の比率を当てはめて月額に換算してください。最新の料金は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
振込件数によります。維持費が無料でも1件あたりの手数料が高い場合、件数が増えると総額で逆転することがあります。維持費・振込手数料・入出金関連・書面発行の4種類を、自社の利用実績に当てはめて比べることをおすすめします。
会計ソフトと連携し、明細を電子で確認できる運用であれば、紙の通帳が必須になる場面は限られます。ただし、提出先から通帳の写しを求められる場合があります。金融機関によっては紙の通帳を発行しない代わりに手数料を抑えた扱いもありますので、公式情報をご確認ください。
連携そのものが要件を満たすわけではありません。電子取引データの保存では、真実性の確保(改ざん防止の事務処理規程、タイムスタンプ、訂正削除の履歴が残るシステム等での授受・保存のいずれか)と、可視性の確保(モニター等の備付けと検索)が求められます。検索要件には売上規模などによる免除の条件がありますが、いずれもデータのダウンロードの求めに応じられることが前提とされています。どの方法で満たすかは事業者ごとに異なりますので、顧問税理士にご確認ください。
口座数が増えると、維持費や書面発行の手数料も口座数に応じて発生します。一方で、入金用と支払用を分けたい、融資の相談先を複数持ちたいといった目的もあります。目的を説明できる範囲に留めるのが現実的です。
金融機関ごとの維持費・振込手数料・開設期間は、法人口座比較ガイドに8行分の公表値をまとめています。
本記事は上記の公表資料を参照して作成しています。特定の金融機関や会計ソフトを推奨するものではありません。料金・条件・制度は変更される場合がありますので、最新の内容は各社および国税庁の公式情報でご確認ください。
本記事は、合同会社NEXBIZ代表・椎木辰徳が自社の法人設立時の経験にもとづいて執筆したものです。当社は金融機関ではなく、本記事に関して特定の金融機関から対価を受け取っていません。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の成果を保証するものではありません。本記事に記載した経験および見解は筆者個人のものであり、金融機関が示す審査基準ではありません。記載内容は情報確認日時点の情報にもとづいています。手数料、必要書類、申込条件は変更される場合がありますので、最新の内容は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。申込み、契約、審査は閲覧者と各金融機関との間で直接行われ、当社は審査結果を保証するものではありません。当社は個別の申込みに関する代理または媒介を行うものではありません。個別の税務・法務・金融に関するご判断は、専門家または各公式窓口へご相談ください。当サイトの情報の利用に関する詳細は免責事項、記事の作成方針は編集方針、広告の取扱いは広告掲載ポリシーをご覧ください。
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