情報の確認
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法人口座の申込は、書類を出して終わりとは限りません。金融機関によっては、面談や電話での確認があります。
私が実際に聞かれたのは、数字の話ではなく「なぜ起業したのか」「どのような経歴なのか」でした。身構えていたので少し意外でしたが、あとから考えると理由があります。登記書類だけでは分からない部分を確かめているからです。
これは私が聞かれた範囲の話で、すべての金融機関が同じことを聞くとは限りません。ただ、聞かれる可能性があると分かっていれば、準備はできます。
ここも事前に知っておきたかった点です。申込の進め方は金融機関によって違います。下表は、私が申し込んだ範囲と、公表されている申込方法をもとに整理したものです。すべての金融機関がこの4通りに分かれるという意味ではありません。
| 進め方 | 特徴 | 準備しておくこと |
|---|---|---|
| 書類の提出のみ | 提出後は結果を待つ形になる | 書面で伝わるよう、事業の説明を文章で用意する |
| 来店しての面談 | 窓口で直接説明する。日程調整が必要 | 営業時間内に行ける日程を確保する |
| Web面談 | オンラインで説明する。移動は不要だが日程調整は必要 | 通信環境と、画面に映る場所を用意する |
| 電話での確認 | 申込内容について問い合わせが入る | 日中に電話を取れる状態にしておく |
面談があるかどうかは、期間にも影響します。日程を合わせるだけで1〜2週間かかることがありました(筆者の経験)。急ぐ場合は、この点も含めて申込先を検討したほうが現実的です。
一方で、面談は「説明できる機会がある」ということでもあります。書類だけでは伝わりにくい事業内容も、その場で補足できます。このあとの第4章で扱う「伝わる言葉に置き換える」準備が、ここで効いてきます。聞かれそうなことを想定して、口頭で言えるようにしておくと落ち着いて臨めます。
どの進め方になるかは、各金融機関の公式サイトに記載されている場合があります。申込方法のページを確認しておくと、心構えができます。
面談の前に、これだけは知っておいたほうが落ち着いて臨めます。金融機関は法令にもとづいて確認しています。担当者が個人的に興味を持って聞いているわけではありません。
犯罪収益移転防止法では、法人のお客さまについて、名称と本店(または主たる事務所)の所在地、取引を行う目的、事業の内容、実質的支配者、そして手続きに当たる担当者の本人特定事項を確認することとされています。
このうち「取引を行う目的」は、顧客からの申告を受ける方法で確認するとされています。つまり口頭または書面で、こちらが説明する必要があるということです。面談で聞かれるのは、この部分だと理解しておくと、質問の意図がつかめます。
背景として、振り込め詐欺などの犯罪に口座が利用される事案が生じたこと、マネー・ローンダリング対策の要請が強まったことが、実態確認を重視する流れにつながっていると金融機関側も説明しています。聞かれること自体は自然なことだと捉えたほうが、準備が進めやすくなります。
ただし、審査の基準そのものは公表されていません。「こう答えれば通る」という説明は、本記事では行いません。用意できるのは、実態を正確に伝えるための材料だけです。
面談や電話での確認で、私が実際に聞かれたのはこの2つでした。数字の話から入るものだと身構えていたので、少し意外だったのを覚えています。
こうした質問が審査でどう扱われるかは公表されていないため、そこは分かりません。ただ、聞かれる可能性があると分かっていれば、準備はできます。
私が聞かれたことと、他の経営者から聞いた話を合わせると、質問はおおむね4つの方向に分かれます。
| 方向 | 聞かれ方の例 | 答えるときの軸 |
|---|---|---|
| 事業内容 | どのような事業をしているか/何を売っているか | 取扱商品・サービスを具体名で。業界用語は避ける |
| 口座の利用目的 | この口座を何に使うか | 「売上の入金と仕入の支払」など、用途を一言で言えるように |
| 取引先とお金の流れ | 誰が顧客か/どう集客しているか/入金はどう発生するか/売上の見込み | 「誰から・何の対価で・どの手段で入るか」の順に。見込みは見込みとして話す |
| 経営者自身 | なぜ起業したのか/どのような経歴なのか | 今の事業とつながる流れとして話す |
経歴については、「どこにいたか」より「何をしていたか」のほうが伝わります。私の場合は、メーカー、大手IT企業、大手ECモール企業、デジタル広告会社、外資系企業で、営業・EC・マーケティングの実務を経験してきました。会社名ではなく、この「営業とEC、マーケティングをやってきた」という部分が、今の事業内容と地続きであることを説明する材料になります。
起業した理由も同じで、今の事業とつながっていることが伝われば十分だと思います。前職までの経験でできるようになったことがあり、それを自分の事業として提供している――この流れが説明できれば、話は素直につながります。感情的な動機を語る場ではないので、事実の並びとして話せる形にしておくと落ち着いて答えられます。
準備としては、4点を口頭で1〜2分で話せるようにしておくと、私は落ち着いて答えられました。具体的な4点と話す順番は、第5章にまとめます。これで結果が変わるという意味ではありません。
逆に、気をつけたい答え方もあります。いずれも「悪意がある」という話ではなく、確認する側から見て情報が足りなくなる、というだけのことです。
この準備は、次の第4章で扱う「伝わる言葉に置き換える」作業とそのまま重なります。書類だけで進む金融機関でも、事業内容の記入欄で同じことを問われます。面談の有無にかかわらず、用意しておいて損はありません。
ここが、私が一番つまずいたところです。自分たちが普段使っている言葉が、そのままでは伝わりません。
「グロース支援」「マーケティング支援」「DX推進」「ソリューション提供」。業界の中では通じる言葉ですが、これだけでは「何をして、どこからお金が入るのか」が分かりません。説明を受ける側からすると、判断のしようがない状態です。
置き換えの方向はシンプルです。誰から、何の対価として、どのように入金されるのか。この3つが入っていれば伝わります。
| 伝わりにくい | 伝わりやすい |
|---|---|
| EC事業者向けのグロース支援 | 食品メーカーから月額の運用料をいただき、楽天市場の店舗運営を代行しています |
| マーケティング支援 | 広告の運用を代行し、企業から月額の運用手数料を受け取ります |
| プラットフォーム事業 | 自社サイトで商品を販売し、購入者からクレジットカード決済で代金を受け取ります |
あわせて気をつけたいのが、説明の順番です。定款に多くの目的を書いている場合でも、いま売上の中心になっている事業を最初に置き、それ以外は「現時点では着手していない」「今後の予定」と区別して伝えたほうが正確に伝わります。すべてを同じ重みで並べると、かえって実態が見えにくくなります。事実を省くという意味ではありません。主従を明示するということです。
新しい業態や、カタカナで表現される事業は特に注意が必要です。その言葉を初めて聞く人でも分かるかを基準に、申込前に一文を用意しておくことをおすすめします。
原稿を読み上げる必要はありません。ただ順番だけ決めておくと詰まりません。私はこの4点を、この順番で言えるようにしておきました。
ここは意識しておいたほうがよい点です。売上や取引社数を聞かれたとき、すでに発生している数字と、これからの見込みを混ぜて話さないことです。
| 避けたい言い方 | 置き換え |
|---|---|
| 「月◯◯万円くらいです」(見込みを断定) | 「現時点で発生しているのは◯件です。今後◯件を見込んでいます」 |
| 「これから決めます」で止める | 「◯◯は決まっていて、◯◯はこれから決めます」 |
| 「いろいろやっています」 | 「主に◯◯です。ほかに◯◯もありますが、今の売上の中心は◯◯です」 |
盛る必要はありませんし、小さく見せる必要もありません。確定しているものを確定として、見込みを見込みとして言うだけです。
自分の業界では当たり前の言葉が、いちばん伝わりません。説明のなかで必ず出てくる用語を3つだけ選んで、言い換えを用意しておくと安心です。第4章の言い換え表がそのまま使えます。
オンラインでの面談を用意している金融機関もあります。移動が不要な一方で、準備しておくことは対面と少し違います。
そして、日程調整そのものに時間がかかります。相手も営業時間内での対応になるため、候補日を出してから実施までに日数がかかります(私の場合は1〜2週間でした)。急いでいる場合は、この点も含めて申込先を検討したほうが現実的です。
なお、面談の準備について「服装」や「熱意」に触れている情報も見かけます。社会人として整えて臨むのは当然として、それで結果が決まるという趣旨ではありません。審査の基準は公表されていないため、当社としてそうした因果関係を示すことはできません。私が用意したのは、上に挙げた「説明できる材料」だけです。
顔写真付きの公的な本人確認書類の提示を求められるのが一般的です。来店が必要かどうかは金融機関や申込方法によって異なりますので、事前にご確認ください。
名義が法人になる点に加えて、開設時に確認される項目が増えます。犯罪収益移転防止法では、個人のお客さまについても本人特定事項に加えて「取引を行う目的」と「職業」を確認することとされています。法人のお客さまの場合は、これに相当するものとして名称と本店(または主たる事務所)の所在地、取引を行う目的、事業の内容が確認され、さらに実質的支配者と手続きに当たる担当者の本人特定事項が加わります。提出する資料が多くなるのはこのためです。
金融機関ごとの維持費・振込手数料・開設期間は、法人口座比較ガイドに8行分の公表値をまとめています。
本記事は上記の公表資料を参照して作成しています。特定の金融機関を推奨するものではありません。申込方法や確認内容は変更される場合がありますので、最新の内容は各社の公式サイトでご確認ください。
本記事は、合同会社NEXBIZ代表・椎木辰徳が自社の法人設立時の経験にもとづいて執筆したものです。当社は金融機関ではなく、本記事に関して特定の金融機関から対価を受け取っていません。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の成果を保証するものではありません。本記事に記載した経験および見解は筆者個人のものであり、金融機関が示す審査基準ではありません。記載内容は情報確認日時点の情報にもとづいています。手数料、必要書類、申込条件は変更される場合がありますので、最新の内容は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。申込み、契約、審査は閲覧者と各金融機関との間で直接行われ、当社は審査結果を保証するものではありません。当社は個別の申込みに関する代理または媒介を行うものではありません。個別の税務・法務・金融に関するご判断は、専門家または各公式窓口へご相談ください。当サイトの情報の利用に関する詳細は免責事項、記事の作成方針は編集方針、広告の取扱いは広告掲載ポリシーをご覧ください。
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